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責任財産の保全 ( 行政書士の「民法」)
責任財産とは、強制執行の対象となる財産のことをいい、
「責任財産の保全」とは、債権者が強制執行をする前提として、
債務者の財産を確保するための手続のことをいう。
債権者代位権
債権者代位権とは
債務者がその財産権を行使しない場合に
債権者が自己の債権を保全するために、債務者に代わり、自己の名で
その権利を行使して、債務者の責任財産の保全を図る制度。
- 債権者代位権は、債権者が「自己の名」で、債務者の権利を行使する。
債権者代位権の要件
- 債権者が、自己の債権の保全する必要があること。
- 債権者の保全する債権(被保全債権)は、原則として金銭債権であること。
- 債務者が「無資力」であること。
(特定物の債権を保全する場合は、無資力要件は不要。)
- 債務者が、その権利を「自ら行使しないこと」。
- 債務者がすでに自ら権利を「行使している};場合」は
その権利行使がたとえ不適切であっても
債権者は、債権者代位権を行使することはできない};。
- 債務者がすでに自ら権利を「行使している};場合」は
- 債権が弁済期に達していること
- 裁判上の代位、保存行為としての代位は、弁済期に達していることは不要。
債権者代位権の要件 |
★債務者が無資力 (よって、債権者が債権の保全を図る必要性がある) (特定物債権の場合は、無資力は要件とならない) |
★債務者が自ら権利行使をしない (債務者が権利を行使したときは、 内容が不適切であっても、代位権は行使できない) |
★債権の弁済期が到来している (裁判上の行使、保存行為は、いつでも可) |
★債務者の一身専属権ない (相続放棄など一身専属権に対しては不可) |
債権者代位権の効果
【 債務者の処分権の喪失 】
- 債権者代位権が行使されると、債務者は処分権を喪失し
債権を譲渡するなどができなくなる。
【 総債権者のための共同担保 】
- 債権者代位権を行使して債務者の下に回収された財産は
総債務者のための共同担保となる。
【 事実上の優先弁済権 】
- 債権者代位の対象が、物や&size(15)[金銭の引渡請求権};である場合
受領拒絶の可能性があるため
債権者は、[「直接自己への引き渡し」を請求できる。- 受け取った金銭の返還債務と、債権者に対する債権を相殺することにより
事実上、優先弁済を受けたことになる。
- 受け取った金銭の返還債務と、債権者に対する債権を相殺することにより
- 債権者代位の対象が「不動産」である場合
登記を債務者に戻すだけであり、受領拒絶は考えられないため
債権者は、直接債権者に登記を移転するような請求はできない。
債権者代位権の転用
「債権者代位権の転用」とは
責任財産の保全以外の目的で、債権者代位権を用いること。
(債務者の無資力要件は不要)
- 「登記請求権」の代位行使
- 「債権譲渡の通知請求権」の代位行使
- 「賃貸人の所有権に基づく妨害排除請求権」の代位行使
- 賃借地の不法占拠者に対して、賃借人は
賃貸人の所有権に基づく土地明渡請求権を代位行使できる。
- 賃借地の不法占拠者に対して、賃借人は
詐害行為取消権
詐害行為取消権とは
債務者が、債権者を害することを知って法律行為をした場合に
その法律行為の取消を裁判所に請求することができる権利。
詐害行為取消権の要件
- 債務者が、債権者を害する法律行為(詐害行為)をしたこと。
- 財産権を目的とする法律行為であること。
(相続の承認・放棄は身分上の問題であり、詐害行為取消権を行使できない。) - 債務者が「無資力」であること。
- 財産権を目的とする法律行為であること。
- 債権は、金銭債権であること
- 債権は、詐害行為の前に発生したこと。
- 債務者及び受益者(転得者)のいづれもが詐害意思を有すること。
- 債務者、転得者のいづれもが詐害の事実を知っていることが必要。
詐害行為取消権の要件 |
★債務者が無資力 (詐害行為時、取消時の両方で無資力) (詐害行為で無資力となっても、その後資力を回復した場合は不可) |
★債務者・受益者の両方が 債権者を害することを知っていた |
★詐害行為の前に、債権が成立している (債権が弁済期であることは不要) |
★財産権を目的とした債権である (相続放棄など財産権以外の行為に対しては不可) |
詐害行為取消権の行使
- 債権者が「自己の名」で行使する。
- 範囲は、被保全債権額の範囲
- ただし、詐害行為の目的物が不可分な場合は
債権額の範囲を超えて全体について取消すことができる。
- ただし、詐害行為の目的物が不可分な場合は
《消滅時効》
- 債権者が取消原因を知ったときから「2年」で消滅時効にかかる
- 詐害行為時から20年を経過することで権利は消滅する。
詐害行為取消権の効果
- 【 総債権者のための共同担保 】
- 【 事実上の優先弁済権 】
債権者代位権と同様
債権者代位権と詐害行為取消権
・・ | 債権者代位権 | 詐害行為取消権 |
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趣旨 | 強制執行の準備手続として、債務者の責任財産の保全 | |
適用場面 | 一般財産の減少を放置する行為 | 一般財産を積極的に減少させる行為 |
債権の成立時期 | なし | 詐害行為の前に成立していること |
履行期 | 弁済期に達していること必要 | 不要 |
客体 | 債権者に属する権利 一身専属権、差押え不可能な権利は除かれる | 債権者を害する法律行為 財産権を目的としない行為は除かれる |
行使範囲 | 裁判上、裁判外を問わない | 裁判上行使する |
効果 | 債務者は処分権を喪失する | - |
権利消滅期間 | なし | 取消原因を知ってから2年 行為時から20年 |