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相殺   ( 行政書士の「民法」

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債権の消滅事由の主なものとして、弁済と相殺がある。

相殺は、2人の者が対立する同種の債権を持つ場合に、
一方の当事者の意思表示で、その相当額を互いに消滅させることをいう。

その他に債権の消滅事由となるものには、代物弁済、供託、更改、混同、免除、がある。

相殺の要件

相殺とは
2人の者が互いに同種の債権を対立する形で有する場合に
一方の意思表示だけで、その相当額において双方の債権を消滅させること。

  • 相殺しようとする債権を自動債権
  • 相殺される債権を受動債権

相殺の要件

 《 相殺適状 》
1.債権の対立
2.双方の債権が同種
3.双方の債務が弁済期
4.双方が有効に存在
5.性質上相殺が許される

《弁済期》
実際上は、受動債権については「期限の利益」を放棄し得る以上
かならずしも弁済期である必要はない。
(自動債権が弁済期であれば相殺可、ということ)

《有効に存在》
自動債権が時効によって消滅していたとしても、
時効消滅「前」に相殺適状(相殺ができる状態)であれば相殺可能。

《相殺禁止に当たらないこと》
・相殺禁止特約がない。
・法律により相殺が禁止されていない。
・受動債権が不法行為に基づく損害賠償請求権ではない。
・自動債権が差し押さえられてない。
・受動債権が差押禁止債権ではない。
・受動債権が支払の差止めを受けていない。

不法行為の場面での相殺

不法行為」による損害賠償請求権を「受動債権」とする相殺は、できない。

  • 不法行為の被害者からの相殺は認められる。
    (損害賠償債権を自動債権とする相殺は認められる)


時効消滅した債権による相殺

債権が時効によって消滅していても、
消滅する前に相手方債権と相殺適状になっていた場合は、
その消滅した債権を自動債権として、相殺ができる


5月1日 …相殺適状
5月15日 …時効により債権消滅
5月31日 …自動債権として相殺可能
      (5月1日に相殺効果が遡及する)


支払差止めを受けた債権の相殺

債権が、第三者から差押を受けた場合に相殺が可能かどうか

《差押を受けた債権と相殺》

差し押さえられた債権を
自動債権としてする相殺
差押で債権を行使することができず、
相殺できない
受動債権が
差押え
られた場合
差押えに債権を取得自動債権は差押えに対抗できる。
つまり、相殺できる。
差押えに債権を取得自動債権は差押えに対抗できない
  • Aを自動債権、Bを受動債権として相殺しようとする場合、
    Bが差押えられたとしても、「Bが差押えられる前に、A債権が収得されていれば」
    相殺適状に達しさえすれば、Aを自動債権として相殺することができる。


相殺できない債権のまとめ

《相殺できない債権》

自動債権として
相殺できない債権
同時履行の抗弁権が付着した債権
弁済期が未到来の債権
差押えを受けた債権
質権が設定された債権
受動債権として
相殺できない債権
不法行為による損害賠償請求権
差押え禁止債権
  • 自動債権に、同時履行の抗弁権が付着している場合は
    相殺するすることができない。
    (一方的な意思表示により、相手方の同時履行の抗弁権を奪うことになる)
  • 時効により消滅した債権を、自動債権として相殺するには
    消滅時効完成「前」相殺適状であったことが必要。
  • 自動債権が弁済期にあれば、受動債権が弁済期前であっても、相殺できる。
    (期限の利益を放棄することで相殺する)


相殺の方法と効果

相殺の方法

相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってなされる。
相手方の同意は不要である。

相殺適状が生じても、相殺の意思表示がなければ債権は消滅しない。

相殺の効果

相殺した場合、双方の債権は、
「相殺適状が生じた時」にさかのぼって
相当額において消滅する。

よって、相殺適状が生じたとき以降の遅延損害金は発生しない。



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