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代理行為と顕名

《ケーススタディ》


Aは、Bから、Bの代理人として別荘を購入する代理権を付与された。

Aは、別荘購入の交渉相手であるCとの交渉において
Bの代理人であることを秘したまま取引を行い、
契約に際してもBから預かっていた実印を使用し、
あたかも本人が契約したかのような形で契約を行った。

Aには、Bの代理人として契約する意思ははっきりしていた。

この場合、民法99条の要請する「本人のためにする」を満たしていると言えるか?



代理制度の意義

代理制度とは、
本人から代理権を付与された代理人が、
「本人のためにすることを示して」相手方と取引行為を行うことで
その効果を直接、本人と相手方の間に生じさせる制度、ということができる。

人は肉体的、知的に有限な存在であり、
同時に異なる場所でしなければならない契約を行うことはできず、
特殊な交渉については専門家に任せる方が合理的なこともある。

また、生まれたばかりの赤ちゃんや知的能力が著しく低い人などは
自分のために自分の知力によって法律行為をなすことが不可能といえる。

このような様々なケースや要請から代理制度は
私的自治の原則の拡張・補充として認められ、民法に規定されている。


「本人のためにすることを示して」とは?

民法99条は、
「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、
 本人に対して直接にその効力を生ずる。」
と規定している。

では、「本人のためにすることを示して」とは、どのようなことをいうのか?

これは「この契約の当事者は誰なのかをはっきりさせる」
という趣旨から要求されているものと解釈されている。

つまり、代理人は、自分が形の上で契約行為を行っているが
「契約の当事者は自分ではない」ということ、「本人のために行っていること」を
相手にはっきりさせて行う、ということになる。 (顕名主義)

では、上記ケースのように
代理人が、代理人であることを示さず、本人のような外観で契約した場合はどうなるか?

契約の相手方にとって重要なことは、「誰と契約しようとしているか」である。

つまり、ここで問題とすべきは
契約の当事者を相手にきちんと知らしめているかどうか、ということ。

契約しようとする者にとっては
「法律行為の効果が帰属す者はだれか」が重要であり、
それをはっきり示しているかどうかが問題となるということにある。

したがって、代理人が自分の立場を示さず、本人になり済ました形で契約したことは
もちろん好ましことではないが、
相手方に、契約当事者を明らかにしている以上、有効な取引と扱われることになる。
 (大判大9.4.27)


民法100条では、
 代理人が「本人のためにすることを示さない」意思表示は、
 「自己のためになしたものとみなす。」としている。
 相手方に、契約者はだれかをはっきり示さなければ、
 意思表示した者が責任をとらなければならない、ということである。





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