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無権利者からの即時取得

《ケーススタディ》


AはBにポータブルテレビを貸していたが、BはCに対して「これは自分の物だ」と言って
Cに売却してしまった。 
Aは、ポータブルテレビを取り返せるか?(Cは即時取得できるか?)

また、Bが売却する際、要素の錯誤があった場合はどうなるか?



無権利者からの取得

もともと権利がない者からその権利を買ったとしても、権利を手にすることはできない。
これは一般論としては当然のことである。

しかし、いかにも権利者と見える者から、善意・無過失で買った者を
保護する必要はないのか?という問題がある。

この問題についての扱いについては、対象が不動産であるか、動産であるか、
によって異なる。

不動産の場合は、虚偽の登記を信用し、信用したことに過失がない場合であっても
無権利者から買った権利を取得することはできない。

一方、動産の場合は、動産を持っている者から、その者が権利者でないとしても
権利者であると信じ、そう信じることについて過失がない場合は、
無権利者から買った権利を取得することができる

これは、動産においては、
権利の公示方法である「占有」に公信力が認められている、ということを意味する。
(不動産の登記には公信力はない。)


即時取得の要件

動産

即時取得とは、「動産」を対象とした制度であり、
動産を占有している者を真実の所有者を信じ、そう信じることに過失がない場合
たとえ無権利者からの購入であっても、その所有権を取得する、という制度であり、
これは動産の取引行為における信頼性や迅速性を保護しようとするもの。

そして即時取得の要件は、
動産であることと同時に
その動産の公示方法が「占有」に依存する財産権であることが必要となる。

つまり、船舶、航空機、登録済み自動車など
登記や登録などによって権利関係が公示されている動産の場合は、即時取得は適用されない

取引行為による取得

即時取得は、取引行為の信頼性や迅速性を保護する制度であるから
前提として「取引行為」というものが必要となる。


民法第192条 (即時取得) 
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。


売買、交換、贈与などが取引行為の例だが
裁判所による競売手続で落札した場合も取引行為となる。

ただし、この取引行為自体に欠陥がある場合は、即時取得が否定される場合がある。

例えば、上記のケースのように、要素の錯誤により売却した場合などは
意思表示は無効となり、即時取得は成立しない。

また、売却した代理人に代理権がない場合(無権代理)も即時取得は認められない。

つまり、即時取得は無権利者との取引を保護するものではあるが
取引行為自体の欠陥まで治癒させるものではない、ということである。


善意・無過失

即時取得は、取引の信頼を保護するための制度であるから、
取引の相手方を権利者と信じ、そう信じることに過失がない者のみを保護する。

占有が移転すること

即時取得には、「引渡し」が必要となる。

つまり、取引行為によって自ら占有を取得することが要件となる。

占有には以下の形態がある。
現実の引渡し …直接相手に引渡す
簡易の引渡し 
 …すでに相手が占有している場合に、正式に相手の所有物にする
占有改定
 …自分の所有物を正式に相手方に渡すことにするが、
  自分が占有を続け、相手から借りている状態にする
指図による占有移転
 …倉庫業者などに預けてある物を、今後は第三者のために預かるように命じ、
  そのことにつき倉庫業者と第三者が合意することによっておこなう

このうち③の占有改定では即時取得は成立しない

占有改定の場合は、引渡しとといっても目的物の移動がないため
引渡しの有無や時期について客観的に判定することが困難であり、口裏合わせ等が可能
であることから、即時取得は成立しない、というのが判例の立場である。



即時取得によりポータブルテレビはCの所有となる。

ただし、Bが売却する際、要素の錯誤がある場合は、取引自体が無効となるため
即時取得も成立しない。





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