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長の権限 (地方自治法)
長の地位
地方自治法は、「地方公共団体の長」の地位・権限等について
以下のように規定している。
《長の地位》
長の地位 | |
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任期 | 都道府県知事、市町村長ともに 任期は4年 |
兼職の禁止 | 長は、衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の議会の議員、常勤の職員・短時間勤務職員と兼ねることができない。 |
関係企業からの 隔離 | 長は、当該普通地方公共団体に対し「請負をする者、法人」の 無限責任社員、取締役等になることはできない。 |
退職 | 長が退職しようとするときは、 都道府県知事は、退職しようとする日の30日前までに 市町村長は、20日前までに 議長に申し出なければならない。 (議会の同意を得たときは、その期日前に退職できる。) |
長の権限
・長は、当該普通地方公共団体を統括し、代表する。
・長は、当該普通地方公共団体の他の執行機関の権限とされていない事務を管理し、
これを執行する。
・予算の調製権、予算案提出権、執行権 は、長の専権。
規則制定権
- 法令に反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し
「規則」を制定できる
(この規則制定については、法令・条例の授権を必要としない)- 規則に違反した者に対して、「5万円以下の過料」を科する旨の罰則を
設けることができる
- 規則に違反した者に対して、「5万円以下の過料」を科する旨の罰則を
再議権(拒否権)
地方自治法は、長と議会の意見が分かれた場合の調整方法として
長による再議権(拒否権)を設けている。
付再議権には、一般的付再議権と特別的付再議権がある。
【一般的付再議権】
長の一般的付再議権 | |
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長の 付再議権 | 条例の制定・改廃、予算に関する議会の議決について異議があるときは 長は、その送付を受けた日から10日以内に、理由を示して これを再議に付すことができる。 |
議会の再議 | 議会は、出席議員の3分の2以上の同意をもって再可決したときは その議決は確定する。 |
【特別的付再議権】
A)違法な議決または選挙
違法な議決・選挙の再議 |
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議会の議決または選挙が ・その権限を超えている場合 ・法令もしくは会議規則に違反すると認める場合 |
長は、理由を示してこれを再議に付し、 または再選挙を行わせなければならない。 |
↓
議決・選挙がなお権限を超え、法令・会議規則に違反すると認めるときは、
都道府県知事は総務大臣に、
市町村長は都道府県知事に、
議決・選挙のあった日から21日以内に、審査を申立てることができる。
↓
総務大臣または都道府県知事は、
議決・選挙が、権限を超え、法令または会議規則に違反していると認めるときは
当該議決・選挙を取り消す旨の裁定をすることができる。
↓
この裁定に不服があるとき、長または議会は
裁定のあった日から60日以内に、裁判所に出訴することができる。
B)執行不能な収支に関する議決
議会の議決が、収入または支出に関し執行することができないものがあると認めるときは、
長は、理由を示して再議に付さなければならない。
議会の議決が、再議に付された議決と同じである場合は、その議決は確定する。
C)特定事項の経費削減に関する議決
以下に掲げる経費を削減又は減額する議決を議会がした場合、
長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない。
《特別事項と長の権限》
- | 特別事項の内容 | 再議でなお、 議会が同じ議決を行ったときの 長の権限 |
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① | ・法令により負担する経費 ・法令の規定に基づいて当該行政庁の職権により命ずる経費 ・普通地方公共団体の義務に関する経費 | 長は、 その経費を予算に計上して 支出することができる。 |
② | ・非常の災害による応急・復旧の施設のために必要な経費 ・感染症予防のために必要な経費 | その議決を 長に対する不信任の決議 とみなすことができる |
議会の解散権
地方自治法は、地方公共団体の長に、議会の解散権を定めている。
長は、議会の不信任の議決に対して、議会を解散することができる。
《議会の不信任決議》
議員定数の3分の2以上の出席で、4分の3以上の同意で
不信任決議が可決されたとき、
直ちに、議長は長に対してその旨を通知しなければならない。
↓
《長の解散権》
長は、不信任決議可決の通知を受けた日から10日以内に限り
議会を解散できる。
(議会を解散しない場合は、不信任議決から10日後に失職する)
↓
《議会の再不信任決議》
解散後、議会が招集され再び不信任決議が可決された場合、
この決議が議長から長に通知された日に、長は失職する。
(この再不信任決議は、3分の2の出席・過半数の同意で可決される)
専決処分
長の専決処分とは、
法律上、議会の議決または決定すべき事項とされているにもかかわらず
長が、議会の議決又は決定を経ないで処分すること。
《18年度改正による、専決処分要件》
①議会が成立しないとき
②議会を開くことができないとき
③特に緊急をようするため、
議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認められるとき
④議会が議決すべき事件を議決しないとき
⇒長は、その議決すべき事件を処分することができる。
⇒長は、議会に報告し、その承認を求める必要がある。
専決処分をなし得る範囲は、
条例の制定・改廃、予算の制定など、原則として議決事件のすべてに及ぶ。
《軽易な議会の権限に対する専決処分》
⇒長は、議会に報告する。承認を得る必要はない。
長の補助機関
地方自治法は、地方公共団体の長に補助機関を以下のように定めている。
「長の補助機関」とは、長の職務執行を補助するための機関。
副知事、副市長村長、会計管理者 がある。
・・・ | 副知事 副市町村長 | 会計管理者 |
---|---|---|
職務 | 長の補佐等 | 会計事務をつかさどる |
人数 | 条例で定める | 必ず1人置く |
任命手続 | 長が議会の同意を得て 選任する | ― |
任期 | 4年 | ― |
長による 任期中の解任 | できる | ― |
・会計管理者は、
長、副知事、副市町村長、監査委員と
親子、夫婦、兄弟姉妹の関係にある者は、なれない。
(その関係になった者は、失職する)
・副知事、副市町村長は、条例で、全く置かないこともできる。
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