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行政行為の瑕疵 (行政法)
行政行為の瑕疵には、違法な行政行為、不当な行政行為 がある。
違法な行政行為 | 法令に違反した行政行為 |
不当な行政行為 | 法令に違反してはいないが、裁量権行使が適正でない行政行為 |
《無効な行政行為と取消すことのできる行政行為》
取消すことができる 行政行為 | 行政行為には公定力があり、瑕疵ある行政行為についても 権限のある国家機関により取消されるまでは 有効な行政行為として扱われる。 |
無効な行政行為 | 行政行為に、重大かつ明白な瑕疵がある場合、無効である。 無効な行政行為には、公定力はない。 |
無効な行政行為
行政行為に重大かつ明白な瑕疵がある場合、その行政行為は無効である。
(強い違法性をもつ行政行為である)
- 無効な行政行為は、公定力をもたない。
- 裁判によらず、その効力を否定できる。
《無効な行政行為となる例》
行為者に関する瑕疵 | ・権限のない者による行政行為 ・強度の脅迫等、行政庁に全く意思のないままなされた行政行為 |
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形式に関する瑕疵 | ・書面でする必要があるのに、口頭でなされた行政行為 ・理由付記が義務付けられているのに、理由が付記されていない行政行為 ・行政庁の署名・捺印を欠く行政行為 |
手続に関する瑕疵 | ・議会の議決が必要であるのに、議決を経ないでなされた行政行為 |
内容に関する瑕疵 | ・内容が不明確な行政行為 ・重大な事実誤認(人違いなど)に基づく行政行為 |
取消すことができる行政行為
無効にならない程度の瑕疵をもつ行政行為は取消すことができる。
(取消すことのできる行政行為)
- 取消されない限り、有効なものとして作用する(公定力)。
- 行政行為の取消しをすることができるのは、
正当な権限を持つ行政庁または裁判所。
(瑕疵を争う場合、行政庁に対する不服申立てか裁判による取消訴訟による)
行政行為の瑕疵と効力認定
違法性の承継 | 先行する行政行為に違法性がある場合、 それを前提とする後続の行政行為が違法性を継承すること。 ・先行行為と後続行為が、連続した一連の手続をなしていること、かつ、 ・同一の法効果を目的としている場合 に限られ認められる。 |
瑕疵の治癒 | 行政行為の瑕疵が軽微である場合、 その瑕疵が、その後修復された場合に、当該行政行為を有効なものとして扱うこと (瑕疵が軽微で、修復の利益がある場合に認められる) |
違法行為の転換 | ある行政行為に違法性がある場合、 それを別の行政行為としてみたときは適法である場合は、 別の行政行為とみなして、適法として扱うこと。 |
行政行為の取消し・撤回
行政行為の「取消し」
《行政行為の取消し》
職権取消 | 成立に瑕疵ある行政行為について 行政庁が、自ら、自発的に、当該行政行為の効力を消滅させること。 (法律上の根拠は不要) |
訴訟取消 | 行政処分に不服のある者が不服申し立てを行い、 審査庁が取消すこと。 |
行政処分に不服ある者が、裁判所に取消訴訟を提起し、 裁判所が取消すこと。 |
行政行為が取り消されると、最初にさかのぼって無効となる。
行政行為を職権で取消した場合、取消しにより不利益を被る者が出る場合がある。
よって、「授益的行政行為」の場合は、
・当該行為の成立に相手方の不正行為がかかわっていた場合
・相手方の既得の利益を犠牲にしても、取消す公益上の利益がある場合
に限り、例外的に職権取消しが認められる。
- 「侵害的行政行為」は、原則として自由にできる。
- 不服申立に対する裁決・決定等は、不可変更力が働くため、
裁決・決定をした行政庁自身は、職権取消しができない。
行政行為の「撤回」
行政行為の「撤回」とは、
成立に瑕疵がない行政行為について、
後発的な事情の変化によって、当該行政行為を存続させることができない場合、
「新たな事情」を理由として、「将来に向かって」行政行為の効力を消滅させること。
(法律の根拠は不要)
- 取消と同様、「授益的行政行為」を撤回するには、制約があり(原則できない)、
撤回した場合は、補償の要否が問題となる。
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《職権取消と撤回》
- | 職権取消 | 撤回 |
---|---|---|
要因 | 行政行為の瑕疵 | 後発的な事情の変化 |
行使権者 | 処分庁、監督庁 | 処分庁 |
効果 | 最初に遡り無効 | 将来に向かって効力消滅 |