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行政法序論 (行政法)
行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法など、
行政に関して規定した法律全般を一般に行政法という。行政法は、行政組織・行政機関の公共的事務遂行が
法に従い、適正に行われるようコントロールする目的を持ち、
公共の利益の実現と、国民の権利利益の保護を、バランス良く実現する必要から
行政権限の行使を規律づけることが重視され、憲法と密接な関係にある。
法律による行政の原理
「法律による行政の原理」とは、
行政権の行使が、国会が制定する法律に基づいて行われることを
要求する原理・原則。
《法律による行政の原理》
法律の優位 | 行政活動は、法律の定めに違反して行ってはならない。 |
法律の留保 | 行政活動には、根拠となる法律の存在が必要。 |
法律の法規創造力 | 国民の権利・義務など一般規律(法規)を創造する力は、 国会が制定する法律に独占される。 |
行政法の法源
- 行政法の法源は、①成分法源、②不文法源 の2つがある
- 成文法が中心であり、不文法は成文法を補充するもの
《行政法の法源》
成文法源 | 不文法源 |
---|---|
憲法、条約、法律、命令、条例・規則 | 慣習法、判例法、条理 |
公法と私法
行政作用は公共の利益を目的とするものであるから私的利益に優先される
という扱いがなされる場合がある。
例えば、市の公共施設を民間企業の営業用に使用させる場合には
民法や借地借家法の規定は排除され、「占用許可」という特別の制度の適用下に置かれる。
こうしたことから、かつて、
「公法上の法律関係には、民法等の私法規定の適用は、原則として排除される」
という主張がなされることがあったが、
このような主張は、今日では排除されている。
例えば、地方公共団体が営むバス事業や公営住宅等は、
道路運送法や公営住宅法等に特別の規定がない限り、民間の経済活動と同様の性質を持つとされ
民法等の私法規定が適用される。
《公法と私法・問題となった判例》
私法を適用 したもの ( 適用余地を 残したもの ) | ①現金出納の権限を有しない地方公共団体の長の借入金受領行為には、 民法110条が類推適用される ②公営住宅の利用関係には、民法及び借地借家法の適用がある ③金銭の給付を目的とする国の権利及び国に対する権利は、 会計法の適用はなく、民法167条1項が適用される ④租税滞納処分としての土地の差し押さえには、 民法177条が適用される ⑤地方議会議員の報酬請求権は、譲渡し得る ⑥課税処分は、信義則の法理によって違法なものとして取り消され得る ⑦独占禁止法に違反した契約の私法上の効力は、直ちに無効とならない ⑧公共団体の工場誘致施策が変更されたことにより損害を被った者は、 信義則違反などを理由として、公共団体の不法行為責任を追及できる |
私法の 適用余地を 認めなかったもの | ①防火地域内にある耐火構造の建築物の外壁一について定める建築基準法65条の規定は、民法234条の適用を排除する ②生活保護法に基づき要保護者が国から生活保護を受ける権利は、財産的権利であるものの、他者に譲り渡すことはできず、相続の対象ともならない |
また、
「公法上の取締規定に違反した契約等の私法上の法律行為は、
直ちに私法上の効力を否定されるものではない」
という考え方も、その正当性が問題となる。
例えば、消費者保護法に違反する取引行為は、
罰金等の刑事制裁の対象となるだけでなく、私法上の契約としても無効となる場合がある。
この場合、消費者保護法など当該取締法規の趣旨や、当該違反行為の反社会性、
取引の安定性確保の要請などを総合的に判断する必要がある。
その上で、私法上の取引についても無効とされる可能性がある、ということである。