行政書士試験・合格トップ > 行政法 > 行政事件訴訟法1章(総則)

文字サイズ:

行政書士・試験のための「行政事件訴訟法・条文」解説

行政事件訴訟法1章(総則)  (条文と解説)


   第一章 総則

(この法律の趣旨)
第一条  行政事件訴訟については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

(行政事件訴訟)
第二条  この法律において「行政事件訴訟」とは、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟をいう。

(抗告訴訟)
第三条  この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2  この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3  この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求、異議申立てその他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4  この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5  この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6  この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
 一  行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
 二  行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7  この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。

(当事者訴訟)
第四条  この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。

(民衆訴訟)
第五条  この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。

(機関訴訟)
第六条  この法律において「機関訴訟」とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。

(この法律に定めがない事項)
第七条  行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。



戻る

行政事件訴訟法第1章 解説

行政事件訴訟法において、
行政訴訟として「抗告訴訟」「当事者訴訟」「民衆訴訟」「機関訴訟」の4類型がある。(2条)

主観訴訟と客観訴訟

このうち「抗告訴訟」「当事者訴訟」は、
原告の主観的権利義務の保護を目的として提起される訴訟であり、「主観訴訟」という。

これに対して「民衆訴訟」「機関訴訟」は、
「自己の権利義務の侵害がなくとも」行政活動の違法を争うことが認められる訴訟であり、
これを認める特別の法律がない限り認められない。

つまり、民衆訴訟、機関訴訟は、
客観的法秩序の適法性を確保するために政策上認められた訴訟であり、
これを「客観訴訟」という。

民衆訴訟の例としては、選挙訴訟や、地方自治法が定める住民訴訟がある。
機関訴訟の例としては、地方自治法の定める地方議会と長の訴訟、代執行訴訟がある。

抗告訴訟

抗告訴訟は、その類型として
取消訴訟」「無効等確認訴訟」「不作為の違法確認訴訟」「義務付け訴訟」「差止訴訟
の5種を挙げている。(3条)

取消訴訟

取消訴訟は、行政処分(公権力の行使)が違法になされた場合に
その処分がなかった状態に戻すこと(取消)を求める訴えである。

*違法建築物の除去命令の取消訴訟、営業許可の不許可処分に対する取消訴訟など

行政事件訴訟法において「取消訴訟」は、抗告訴訟の中心を占める訴訟として扱われており
その他の抗告訴訟については取消訴訟の規定を準用するという形をとっている。

無効等確認訴訟

無効等確認の訴え」は、処分・裁決の存否、効力の有無の確認を求める訴訟。(3条4項)

「取消」訴訟のほかに、なぜ、「無効」を確認する訴訟が規定されているかを端的に説明すると
取消訴訟においては、処分等があったことを知った日から6か月、処分等があった日から1年以内に
提起しなければならず、この出訴期間を経過すると、たとえ違法な行政処分でも
取消訴訟で争うことができなくなる

出訴期間は、行政処分内容の早期実現、行政法関係の安定性確保のために認められたものだが
出訴期間によって、原告救済の視点から問題が生じることがある。

そこで、「重大」かつ「明白」な瑕疵をもつ無効な行政処分であるものについては
出訴期間を設けずに、その効力を否定できる無効確認訴訟が例外的に認められている、
ということである。

不作為の違法確認訴訟

不作為の違法確認の訴え」とは、法令に基づく申請に対して不作為が続いている場合に
不作為が違法であることを確認する訴訟。(3条5項)

許認可申請に対して不作為が続いている場合、
社会保障給付申請に対して応答がない場合など。

不作為の違法が確認されると、行政庁は許認可等の「結論」を出すことが求められる。

許可や給付の義務付けを求める「義務付け訴訟」と併合して訴訟提起することも考えられる。

義務付け訴訟

義務付け訴訟は、2004年の行政事件訴訟法改正により法定された。
以下の2タイプがある。

申請満足型義務付け訴訟
許認可等の申請に対して、行政庁が、不作為または拒否をした場合、
行政庁に許認可等をすべきことを命じることを求める訴訟。

保育園入園義務付け訴訟、生活保護処分の義務付け訴訟など

直接型義務付け訴訟
行政庁に、権限発動として一定の処分をすべきことを求める訴訟。

違法建築物の除去処分の義務付け訴訟など

差止訴訟

差止訴訟とは、侵害的な行政処分がなされようとしている場合に
事前に、行政庁に対して、処分をしてはならないことを命じることを求める訴訟。

侵害的性質を持つ行政処分や権力的事実行為に対する、事前救済のための手段となる。

(2004年改正で法定された)



行政書士試験の「行政事件訴訟法」 ページ案内

行政事件訴訟法
取消訴訟① 概要
取消訴訟② 要件

取消訴訟③ 審理
取消訴訟④ 執行停止
取消訴訟⑤ 判決と効力

行政法トップ

憲法・民法・行政法と行政書士試験 トップ