自己契約
《ケーススタディ》
Aは、Bに、マンション1室を購入するように依頼し、代理権を授与した。
BはAの代理人となったわけだが、
B自身が所有する物件をAに売ることを思いついた。
そこでBは、この物件をAに譲渡する契約書をつくり、利益を得ることができた。
このような行為、契約は有効か?
自己契約の禁止
代理による契約について考える場合、
「本人」「代理人」「相手方」という3者の立場が必要となる。
この3者は常に別人出なければならないのか?兼務することは可能か?
ということが問題として出てくる。
上記ケースでは、
「本人A」に対し、「代理人=相手方B」、という形である。
民法108条は、これを禁じている。(自己契約)
なぜなら、Bが自己の利益を優先させ、
代理権を授与した本人Aの利益が損なわれる可能性が高いからである。
また民法108条は、
「本人」「相手方」「本人と相手方双方の代理人」という形も禁じている。(双方代理)
相手方も、代理権を授与した本人であり、
どちらかの本人の利害が損なわれる可能性があるからである。
自己契約の効力
では、法律上禁じられている自己契約がなされてしまった場合どうなるか?
この場合は、狭義の「無権代理」行為、ということになる。
つまり、本人がこれを「追認」すれば、有効な契約となる(民法116条)が、
追認が得られない場合は、代理人として行為した者が「無権代理人」の責任を負うことになり、
相手方の選択に従い「履行又は損害賠償」の負担を負う。(民法117条)
ただし、以下の場合は形の上で「自己契約」「双方代理」であっても
例外として認められるとしている。
「債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。」(民法108条)
売買代金の支払いや目的物の引渡しなどの「債務の履行」は
新たな利害関係を生じされるものではなく、
「本人が許諾した行為」も問題がない。
無権代理行為として問題となるのは、
新たな利害関係が生じる行為を、本人の許諾なく行うことにある、といえる。
Bの行為は「自己契約」であり、民法で禁じられている。
Aの追認があれば有効となるが、
追認がない場合は、無権代理行為として「履行又は損害賠償」の責任を負うことになる。
(このケースでは損害賠償となる。)
関連ページ
民法のケーススタディ
●未成年者の契約の取消し
●代理と顕名主義
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●表見代理か?無権代理か?