憲法・民法・行政法と行政書士 > 民法 > 抵当権の民法条文と解説
抵当権の基本条文 (民法)
抵当権の内容
[民法369条]
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
〈ポイント〉
- 目的物の占有権は抵当権者に移転しない。
- 将来発生する債権について、現在において抵当権を設定できる。
- 抵当権は、第三者への対抗要件として登記が必要。
(当事者間では、登記がなくとも対抗できる。) - 抵当権の目的物は、不動産(土地・建物)、地上権、永小作権。
(動産には設定できない。)
(ただし、不動産の付加物である動産には効力が及ぶ。) - 土地に設定された抵当権は、建物には効力が及ばない。
- 1つの債権に対して、複数の抵当権を設定することができる。
〈 判例 〉
- 抵当権実行前でも、抵当権侵害による損害賠償請求は認められる。
(大判昭5.11.19) - 第三者が抵当不動産を不法占拠することにより、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となる状態があるときは、抵当権に基づく妨害排除請求としてかかる状態の排除を請求することが許される。
(最大判平11.11.24)
抵当権の効力の及ぶ範囲
[民法370条]
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっているものに及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第424条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りではない。
〈ポイント〉
- 抵当権の効力は、抵当不動産の付加一体物に及ぶ。
- 抵当権を動産を目的として設定することはできないが、抵当不動産の付加物にその効力は及ぶ。
〈 判例 〉
- 借地上の建物に抵当権を設定した場合、抵当権の効力は従たる権利である賃借権に及ぶ。
(大連判大8.3.15) - 抵当権者が抵当権の目的である山林に対して既に権利実行に着手し、競売が開始された場合には、土地と一体をなす立木に対し差押の効力が及ぶ。
(大判昭7.4.20) - 抵当権の実行により、競落人が建物の所有権を取得した場合、建物の所有に必要な敷地の賃借権も競落人に移転する。
(最判昭40.5.4)
[民法371条]
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
[民法372条]
第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。
〈ポイント〉
- 不履行がある場合、抵当権者に果実収取権が生ずる。
(この場合、抵当権設定者の果実収取権は失われる。) - 抵当権の目的物が火災で消失するなど滅失・毀損した場合、物上代位により、保険金請求権など、その滅失・毀損により債務者が受けるべき金銭等に抵当権の効力は及ぶ。
(保険金等が債務者に支払われる前に、差押えることが必要)
- 民法296条⇒「担保物権の不可分性」
(全部の弁済を受けるまで、抵当権の全部について効力がある)
民法304条⇒「物上代位」
民法351条⇒「物上保証人の求償権」
抵当権の順位
[民法373条]
同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。
[民法374条]
抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
抵当権の処分
[民法376条1項]
抵当権者は、その抵当権を他の債務の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
[民法377条1項]
前条の場合には、第467条に規定に従い、主たる債務者に抵当権処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
〈ポイント〉
- 抵当権者は、その抵当権を自分の債務の担保とすることができる。
- 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とすることができる。(転抵当)
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