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危険負担 (民法)
「危険負担」とは
中古の建物など特定物の売買契約の場合、
契約成立後、売主の過失・故意によって引渡し債務の履行ができなくなったときは、
債務不履行の問題(履行不能)となり、債権者は損害賠償の請求・解除をすることができる。
一方、契約成立後、不可抗力により引渡し債務の履行ができなくなったときは、
危険負担の問題となり、民法では債権者主義をとっており、
建物の引渡しがなされなくても、買主は代金の支払い義務を負う。
《債務不履行と危険負担》
引渡し不能の原因と、危険負担・債務不履行 | ||
---|---|---|
- | 引渡し不能の原因 | 効果 |
債務不履行 | 売主の故意・過失による 引渡し不能 | 債権者は、損害賠償請求・解除が可能 |
危険負担 | 不可抗力による 引渡し不能 | 負担は債権者主義がとられる (買主が支払い義務を負う) |
[民法534条]
特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2 不特定物に関する契約については、第401条第2項の規定よりその物が確定した時から、前項の規定を準用する。
民法上の規定では上記の通り、不可抗力による危険を買主に負担させることを原則としている。
ただし、これと異なる内容の契約を結ぶことは可能であり、
通常、建物の引渡しができなくなった場合、売主は代金を支払わない、とする特約を締結する。
なお、「履行遅滞中」に不可抗力により目的物が滅失した場合は、
売主が、債務不履行の責任を負う。
契約締結の前後と危険負担
特定物の引渡し債務において、特定物が滅失・損傷した場合、以下の通り、
滅失・損傷の発生が、契約締結の前後、引渡しの前後により
誰が負担を負うかに違いが生じる。
特定物債権の効果
特定物債権とは、特定の物の引渡しを目的とする債権をいう。
特定物債権は以下の効果を持つ。
- 債務者は、引渡しをなすまで、善管注意義務を負う。
(善管注意義務…善良な管理者の注意をもってその物を保管すること) - 債務者は、その引き渡しなすべき時の現状でその物を引き渡すことを要する。
- 危険負担(不可抗力による特定物の滅失・損傷)は、原則として債権者主義となる。
- 特約がない限り、契約時に所有権が移転する。