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制限行為能力者 ( 行政書士の「民法」)
行為能力とは、単独で、確定的に、有効な、法律行為をなし得る能力をいう。
行為能力が制限される者を「制限行為能力者」という。
制限行為能力者
未成年者
・未成年者とは20歳未満の者
原則 | 未成年者が、法定代理人の同意を得ないでした法律行為は 取り消すことができる。 |
---|---|
例外 | 以下の場合は取り消すことができない ①単に権利を得、義務を免れる行為 ②処分を許された財産の処分 ③法定代理人に許された一定の営業に関する行為をすること |
⇒民法5条
*法定代理人とは、代理権が本人意思に基づかずに
法律の規定によって与えられる代理人をいう。
【保護者】
- 未成年者の保護者は、親権者または未成年後見人
- 取消権、同意権、追認権、代理権を有する
- 取消権、同意権、追認権、代理権を有する
成年被後見人
・成年被後見人とは、
精神上の障害によって物事の判断能力を欠く常況にある者で
家庭裁判所で後見開始の審判を受けたもの
原則 | 成年被後見人が、単独で行った法律行為は 取り消すことができる |
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例外 | 日常生活に必要な範囲の行為については 単独で有効に行うことができ、取り消すことはできない。 |
⇒民法9条
【保護者】
- 成年被後見人の保護者を成年後見人という
- 取消権、追認権、代理権を有する
( 同意権はない ) - 成年後見人は、法人もなることができる
- 成年後見人が選任されている場合でも、さらに成年後見人を選任できる
- 取消権、追認権、代理権を有する
被保佐人
・被保佐人とは、
精神上の障害によって物事の判断能力が著しく不十分な者で
家庭裁判所で保佐開始の審判を受けたもの
原則 | 被保佐人は、単独で法律行為をすることができる |
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例外 | 重要な財産上の行為(民法13条)について、 保佐人の同意を得ずに行った法律行為は 取り消すことができる。 日常生活に必要な範囲の行為については 単独で有効に行うことができ、取り消すことはできない。 |
【保護者】
- 被保佐人の保護者を保佐人という
- 取消権、同意権、追認権を有する
- 裁判所は、審判によって、特定の法律行為について
保佐人に、代理権を与えることができる
。--保佐人は、法人もなることができる。 - 保佐人が選任されている場合でも、さらに保佐人を選任できる。
【保佐人の同意を要する行為】
被保佐人が以下の行為を行うとき、保佐人の同意を要する。
- 元本の領収または利用
- 借財または保証をすること
- 不動産その他の重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
- 贈与、和解、仲裁合意
- 相続の承認、放棄、遺産の分割
- 贈与の申込の拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の承諾、負担付遺贈の承認
- 新築、改築、増築、大修繕
- 賃貸借 (⇒民法13条)
【被保佐人は、債務の承認を「保佐人の同意なく」行うことができるか?】
⇒できる。(被保佐人の「債務の承認」により、時効は中断する。)
ただし、時効完成後に、債務を承認する場合は「保佐人の同意が必要」。
(民法13条規定の「借財」に相当するため)
被補助人
・被補助人とは、
精神上の障害によって物事の判断能力が不十分な者で
家庭裁判所で補助開始の審判を受けたもの
原則 | 被補助人は、単独で法律行為をすることができる |
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例外 | 民法13条1項所定の行為の中から、被補助人の精神状態に応じて 家庭裁判所が決めた特定の法律行為については、 被補助人は単独で行うことができない。 この場合、補助人の同意を得なかった行為は取り消すことができる。 |
- 本人以外の者の請求により補助開始の審判をする場合は
本人同意が必要である
【保護者】
- 被補助人の保護者を補助人という
- 取消権、同意権、追認権を有する
- 裁判所は、審判によって、特定の法律行為について
補助人に、代理権を与えることができる - 補助人は、法人もなることができる
- 補助人が選任されている場合でも、さらに補助人を選任できる
取消しの効果
- 取り消された法律行為は、遡及的に(始めにさかのぼって)無効となる。
- 譲り受けた物やその他の給付を返還しなければならない。
- 制限行為能力者の返還義務の範囲は、「現に利益を受けている限度」で足りる。
(散財などで既にない場合は、返還しなくてもよい、ということになる)
- 制限行為能力者の返還義務の範囲は、「現に利益を受けている限度」で足りる。
相手方の保護
法定追認 | 社会通念上、追認と認め得るような事実が存在する場合に 法律上、追認と同様の効果を生じさせる (法定代理人の同意を得ないで買った物を 法定代理人が他人に売ってしまうような場合) |
取消権の 期間制限 | 追認できるときから5年 行為の時から20年 |
催告権 | 追認できる者に対し、追認するかどうかを確答すべき旨の 催告をすることができる |
詐術による 取消権否定 | 制限行為能力者が、「詐術」により行為能力者であると誤信させたときは、 当該法律行為を取り消すことができない。 (未成年者が年齢を偽って、売買契約を締結した場合など) ・制限行為能力者であることを「黙秘」しただけでは詐術にならないが 黙秘が、他の言動と相まって、相手方を誤信させたときなどは詐術となる。 |
- 制限行為能力者
(未成年者、成年被後見人、被保佐人、補助人の同意を要する旨の審判を受けた補助人)
の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者となった後、その者に対して、
1カ月以上の期間を定めて
取り消すことができる行為を追認するかどうか確答すべき旨の催告ができる。
⇒期間内に確答がない場合は、「追認した」ものとみなされる。
- 制限行為能力者の相手方は、
その制限行為能力者が行為能力者とならない間に、
法定代理人、保佐人、補助人に対して、1カ月以上の期間を定めて
その権限内の行為を追認するかどうか確答すべき旨の催告ができる。
⇒期間内に確答がない場合は、「追認した」ものとみなされる。
- 制限行為能力者の相手方は、
被保佐人、補助人の同意を要する旨の審判を受けた補助人に対して、
1カ月以上の期間を定めて
保佐人・補助人の追認を得るべき旨の催告ができる。
⇒期間内に確答がない場合は、「取消した」ものとみなされる。
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