行政書士・合格トップ > 憲法 > 人権享有主体性
人権享有主体性 (憲法)
行政書士・試験ランク A
憲法と人権享有主体性の問題
人権は、すべての人が生まれながらに有する普遍的な権利。
これは、人種、性別、社会的身分に関係がない。
ただし、日本国憲法第3章において、「国民の権利及び義務」と表題がされ
権利の主体を「国民」に限定した形で規定している。
「国民」とは、「日本国籍を有する自然人」のことになるが、
ここで、これにあたらない外国人、法人が人権を享有する主体となり得るかが問題となる。
「外国人」の人権享有主体性
外国人の人権享有主体性の問題について判例は、
「権利の性質上『日本国民のみをその対象としている』と解されるものを除き、
外国人に対しても基本的人権の保障が及ぶ」 (マクリーン事件・最大判昭53.10.4)
としている。
では、日本国民のみを対象としているもの、外国人にも保障が及ぶものは何か。
《外国人の人権享有主体性》
外国人の人権享有主体性 | |
---|---|
政治活動の自由 表現の自由 | 外国人の政治的表現の自由は、 わが国の政治的意思決定・その実施に影響を及ぼす活動等に関しては保障されないが、それ以外の政治的活動の自由は保障される。 |
出国の自由 | 保障される |
入国の自由 在留の自由 再入国の自由 | 保障されない |
参政権 | 《国政》国民主権の見地から、保障されない。 《地方参政権》 憲法で保障されているわけではないが、 法律をもって外国人に地方参政権を付与することは憲法上禁じられていない。 |
生存権 社会権 | 社会保障施策における在留外国人の処遇は、政治的判断に委ねられており、 自国民を在留外国人より優先的に扱うことも許される。 |
「法人」の人権享有主体性
自然人ではない「法人」の人権享有主体性の問題について判例は、
「国民の権利および義務の各条項は、
性質上可能な限り、内国の法人にも適用される。」 (八幡製鉄事件・最大判昭45.6.24)
としている。
「性質上可能なもの」としては、
経済的自由権、請願権、裁判を受ける権利、プライバシー権、国家賠償請求権、等々がある。
ただし、自然人としか結合しえない人権(選挙権、生存権、生命・身体に関する自由など)
は、性質上保障されない。
八幡製鉄政治権献金事件(最大判昭56.6.24)
八幡製鉄政治権献金事件においては
・法人の政治活動の自由権(政治献金)について、
・法人の政治活動と構成員の思想・良心の自由の関係について
などが争われた。
《法人の政治献金と政治活動の自由》
八幡製鉄政治権献金事件(最大判昭56.6.24) | |
---|---|
争点 | ①法人の政治献金は、自然人と異なる制約はないのか ②会社の政治献金は、法人の「目的の範囲内」といえるか |
判旨 | ①法人は、自然人と同様、政治的行為をなす自由を有する。 政治献金もその一環であり、これにより政治の動向に影響を与えることがあったとしても、自然人たる国民による寄付と別異に扱う憲法上の要請はない。 ②会社の政治献金が憲法に反するものでない以上、「目的の範囲内」ということができ、無効とならない。 |
南九州税理士会事件(最判平8.3.19)
《税理士会の政治献金》
南九州税理士会事件(最判平8.3.19) | |
---|---|
争点 | 強制加入である税理士会が、政治献金を行うことは「目的の範囲内」か |
判旨 | 税理士会は、強制加入団体であり、会員は脱退の自由も認められていないことから、会の活動には限界がある。 税理士会が、政党などの政治団体への寄付をすることは、たとえ税理士会にかかる法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するためのものであっても、税理士会の「目的の範囲」外の行為であり、無効である。 |
「天皇」の人権享有主体性
天皇が「国民」に含まれるか否かについては、学説上、異なる見解がある。
ただし、天皇・皇族も人である以上、人であることについての権利は当然に保障される。
ただし、皇位の世襲、職務の特殊性などから必要最小限で、制限を受ける。
《天皇が一般国民と異なった取り扱いを受ける権利》
・認められないもの
…政治活動の自由、職業選択の自由、外国移住の自由、国籍離脱の自由、婚姻の自由
・一定の制約を受けるもの
…表現の自由、学問の自由