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不法行為 ( 行政書士の「民法」)
不法行為とは、故意または過失によって、他人の身体や財産などを侵害し、
損害を与える行為をいう。
不法行為によって損害を受けた被害者は、加害者に対して損害賠償を請求することができる。
不法行為の責任と損害賠償
- 故意または過失によって、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は
これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
- 他人の身体、自由、名誉を侵害した場合、他人の財産を侵害した場合の
いずれかであるかを問わず、損害賠償の責任を負う者は
財産以外の損害に対しても、その損害を賠償しなければならない。
- 金銭により、賠償する。
- 名誉棄損の場合は、裁判所は、被害者の請求により
損害賠償に代え、又は損害賠償とともに名誉を回復するに適当な処分を
命じることができる。
- 名誉棄損の場合は、裁判所は、被害者の請求により
- 被害者が、加害者の故意又は過失を立証しなければならない。
《不法行為の要件と賠償》
要件 | ① 加害者に、故意又は過失がある。 ② 権利・利益の侵害 ③ 損害の発生。 (財産的損害、精神的損害) ④ 違法行為と損害の間の因果関係。 ⑤ 加害者に責任能力がある。 |
賠償 | 金銭賠償を原則とする。 (名誉棄損の場合は、裁判所は、被害者の請求により 名誉回復のための適当な処分を命じることができる) |
請求権者
《請求権者》
原則 | 被害者本人 |
本人が死亡した場合 | 相続人 (損害賠償・慰謝料の請求権を相続し、行使できる) 父母、配偶者、子 (損害賠償・慰謝料を請求できる) 胎児 (すでに生まれたものとみなす。) (生まれる前に親権者等が代理権を行使することはできない。) |
正当防衛・緊急避難
- 他人の不法行為に対し、自己または第三者の権利・利益を防衛するため
やむを得ず加害行為をした者は、賠償の責任を負わない。
(被害者から不法行為をした者に対する損害賠償請求は妨げない。) - 他人の物から生じた急迫の危難を避けるため、その物を壊した場合も同様。
過失相殺
- 被害者に過失があったときは、
裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
(考慮しなければならないわけではない)- 親・配偶者等、被害者と未分譲・生活上一体をなすと見られる者の
過失は考慮される。(判例) - 被害者の体質的素因・心因的素因も考慮される場合がある。(判例)
- 親・配偶者等、被害者と未分譲・生活上一体をなすと見られる者の
損害賠償請求権の消滅時効
- 不法行為による損害賠償請求権は、
被害者又はその法定代理人が
損害、及び加害者を知ったときから3年間で時効消滅する。- 不法行為時から20年間経過したときも同様。(免訴期間)
責任能力と賠償
- 未成年者は、他人に損害を加えた場合において
自己の行為を弁識するに足りる知能を備えていなかった場合は
その行為について賠償の責任を負わない。
- 精神上の障害により、自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態の間に
他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。- ただし、故意または過失によって一時的にその状態を招いたときは
この限りでない。
- ただし、故意または過失によって一時的にその状態を招いたときは
《監督義務者の責任》
- 責任無能力者が損害の責任を負わない場合、
その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は
責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。- ただし、監督責任者が、その義務を怠らなかったとき、又は
その義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは
この限りでない。
- ただし、監督責任者が、その義務を怠らなかったとき、又は
使用者の責任
- 事業のために他人を使用する者は、
被用者が、事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。- 使用者が、被用者の選任・監督について相当の注意をしたとき、
または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは
この限りでない。
- 使用者が、被用者の選任・監督について相当の注意をしたとき、
- 使用者・監督者が損害賠償をしたときは、被用者に求償することができる。
- ただし、求償できるのは、信義則上相当と認められる額に限られる。
- 被害者は、被用者と使用者の両方に対して、損害額の全額の賠償を請求できる。
注文者の責任
- 注文者は、請負人がその仕事において第三者に加えた損害を賠償する
責任を負わない。- ただし、注文又は指図において注文者に過失があった場合は、責任を負う。
工作物責任
- 土地の工作物の設置・保存に瑕疵があることによって、他人に損害が生じたときは、
工作物の占有者が損害を賠償する責任を負う。
- 占有者が、損害の発生を防止するのに必要な注意を怠らなかったときは、
所有者がその損害を賠償しなければならない。
共同不法行為
- 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、
各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。- 共同行為者のうち、誰が損害を加えたかわからない場合も同様。
- 行為者を教唆した者、幇助した者も同様。
- 被害者は、それぞれ全員に対して、損害額の全額を請求することができる。