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条例と規則 (地方自治法)
地方公共団体の事務
地方自治法の平成11年改正により、地方公共団体の事務は以下の2つに大別されている。
①自治事務 ②法定受託事務
《法定受託事務と自治事務》
・・・ | 自治事務 | 法定受託事務 |
---|---|---|
内容 | 地方公共団体が処理する事務のうち 法定受託事務以外のもの | 国が本来果たすべき役割に係るもので、法律又は政令により、特に地方公共団体にその処理が委託される事務 |
例 | 都市計画の決定、飲食店営業の許可、 病院・薬局の開設許可 | 国政選挙、旅券交付 国道管理、戸籍事務 |
議会の 関与 | ①両事務に関し、書類・計算書を検閲できる ②監査委員に監査を求め、監査結果を請求できる ③意見書を国会・関係行政庁に提出できる | |
議決事項 の追加 | 条例で追加できる | 条例で追加できる 国の安全に関することその他の事由により対象外として政令で定めるものを除く |
条例 制定権 | ある | |
監査委員 の監査 | できる | |
100条 調査権 | 調査できる (収用委員会、労働委員会に属する事務で、政令に定めるもの以外) | 調査できる (国の安全を害するおそれがある等の理由で、対象とすることができないと政令で定めるもの以外) |
行政不服審査法 | できない | できる |
・国は、地方公共団体が自治事務として処理している事務と同一の事務であっても、
法令の定めるところにより、国の事務として直轄的に処理することができる。
(この場合、当該普通地方公共団体に通知をしなければならない。)
・国から地方公共団体に委託される事務を第1号法定受託事務
・都道府県から市町村に委託される事務を第2号法定受託事務
・主務大臣は、法定受託事務の処理に関する基準を定めることができる。
条例
条例は、地方公共団体が制定する自主法
[地方自治法14条]
普通地方公共団体は、法令に反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。
2 普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。
3 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがある場合を除くほか、その条例の中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料をを課する旨の規定を設けることができる。
- 法令に違反しない限りで、条例を制定できる。
- 義務を課し、権利を制限するには、条例によらなければならない。
- 条例では、法律による委任は要しない。
(政令は、法律による委任を要する) - 条例で罰則を定めるには、
法律による授権が、相当程度に具体的で、限定されていればよい。 - 法律が定めていない罰則を、条例で規定することは可能。(一定限度内で)
- 法律より厳しい罰則を、条例に規定することも可能。(一定限度内で)
- 法定受託事務、自治事務で条例が制定できる。
《判例》
★条例が国の法令に違反するかどうかは、
それぞれの趣旨、目的、内容、効果を比較し、両者の間に矛盾があるかどうかによってこれを決しなければならない。
(最大判昭50.9.10)
条例制定権の範囲
《条例制定権の範囲》
法令 | 条例は、「法令に反しない限りにおいて」制定することができる。 |
法律留保事項 | 憲法上で、法律で定めるべきものとされている事項(法律留保事項) ①財産権の規制、②租税の賦課徴収、③罰則 について 条例で定めることができるかが問題となる。 ⇒条例は、民主的基盤を有する地方議会によって制定されるものであるから ①②③いずれについても、条例で定めることができる。 |
規制事項の 性質問題 | 条例は、地方政治に関するものであるから ・性質上、国にのみ属する事項(国防、外交) ・全国画一的な規制が必要とされる事項(裁判制度、義務教育) については条例で定めることはできない。 |
条例の公布
地方自治法は、条例の制定・公布・施行等につき以下のとおり定めている。
《条例の公布・施行》
長への送付 | 議会で、条例の制定・改廃の議決があったときは、 議長は、「3日以内」に、長にこれを「送付」しなければならない。 |
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公布 | 長は、「再議その他の措置を講ずる必要ないと認めるとき」は、 「送付を受けた日」から「20日以内に公布」しなければならない。 |
施行 | 「公布の日」から「10日を経過した日から施行」する。 (条例に特別な定めのある場合を除く。) |
条例の公布に必要な事項 | 条例で定めなければならない |
- 規則、規定で、公開を要するものについては、
施行・条例の公布に必要な事項を準用する。
(公開を要しないものについては不要)
規則
[地方自治法15条]
普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属る事務に関し、規則を制定することができる。
2 普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めのあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
- 法律の委任は不要。
- 条例の授権は、不要。
- 規則で、過料を課すことができる。
(科料ではない) - 施行期日の定めがある場合を除き、
「公布の日から」起算して「10日を経過した日から施行」される。
条例と規則
《条例と規則》
- | 条例 | 規則 |
制定権者 | 普通地方公共団体の 議会 | 普通地方公共団体の 長 |
制定範囲 | 地方公共団体の事務 | 長の権限に属する事務 |
違反者への規定 | ・2年以下の懲役又は禁錮 ・100万円以下の罰金 ・拘留 ・科料 ・没収 ・5万円以下の過料 | ・5万円以下の過料 |
法令にない罰則の規定 | 可能 | - |
法令による委任の必要 | 不要 |