質権 (民法)
「質権」の基本(担保物権)
質権とは、債権の担保として、債務者や第三者から受け取った物を債権者が占有し、弁済がないときに換価し、その代金から優先弁済を受ける担保物権である。
[民法342条]
質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
[民法343条]
質権は、譲り渡すことができない物をその目的物とすることができない。
[民法344条]
質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
[民法348条]
質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可抗力によるものであっても、その責任を負う。
[民法351条]
他人の債務を担保するために質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
〈ポイント〉
- 譲渡できない物に質権設定できない。
- 質権は、目的物の引渡しによって効力を生ずる。
- 質権の設定は、占有改定によることはできない。
(簡易の引渡し、指図による占有移転は認められる。) - 債権の全部の弁済を受けるまでは、質物の全部について権利を行使できる。
- 質権者は、果実を集取し、自己の債権の弁済に充当できる。
- 質権者が質権に基づき質物の引渡しを拒むことでは時効は中断しない。
- 質権は、動産、不動産、財産権に設定することができる。
動産質
[民法352条]
動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
- 質物に対する占有喪失は、質権そのものの消滅をもたらすわけではないが、
第三者への対抗要件は失われる。
{民法353条]
動産質権者は、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えによってのみ、その質物を回復することができる。
- 質物を奪われた動産質権者は、物権的請求権を行使することはできない。
[民法354条]
動産質権者は、その債権の弁済を受けないときは、正当な理由がある場合に限り、鑑定人の評価に従い質物をもって直ちに弁済にあてることを裁判所に請求することができる。この場合において、動産質権者は、あらかじめ、その請求をする旨を債務者に通知しなければならない。
不動産質
[民法356条]
不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができる。
〈ポイント〉
- 不動産質権では、当該不動産について使用、収益することが認められる。
- 不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他の不動産に関する負担を負う。
- 不動産質権者は、その債権の利息を請求することができない。
- 不動産質権の存続期間は10年を超えることができない。
(契約の更新はできるが、その期間も更新の時から10年を超えることができない) - 不動産質権を第三者に対抗するには、登記が必要。
権利質
[民法362条1項]
質権は、財産権をその目的とすることができる。
[民法363条]
債権であってそれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。
[民法364条]
指名債権を質権の目的としたときは、第467条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
[民法366条]
質権者は、質権の目的である債権を直接に取り立てることができる。
2 債権の目的物が金銭であるときは、債権者は、自己の債権額対応する部分に限り、これを取り立てることができる。
3 前項の債権の弁済期が質権者の債権の弁済期前に到来したときは、質権者は、第三債務者にその弁済をすべき金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
4 債権の目的物が金銭でないときは、質権者は、弁済として受けたものについて質権を有する。
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