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行政書士・試験のための「行政法・用語」解説
行政指導
行政指導は、法的拘束力のない協力要請
例えば、行政がある種の営業活動を公益上の見地から望ましくないと判断した場合、
根拠となる法令があれば、
営業停止命令などの行政行為(処分)によって営業を中止させることができる。
しかし、こうした法令がない場合は、「非権力的手段」を取らざるを得ず、
相手の任意の協力により営業の中止を求めることになる。
このように、行政が、市民に対して強制力を伴わない形で一定の行動を求めることを
行政指導という。
行政手続法2条6項 (行政指導の定義)
行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
つまり、行政指導とは、
非権力的手段によって市民を誘導し、市民の自発的協力を得て行政目的を実現しようとするもの
と言うことができる。
行政指導に、法的根拠は必要ない
当然のことながら、法令が社会生活・経済活動のすべてにわたって規定されているわけではない。
法令が不備の場合、新たな状況の中で法令が制定されていない場合などで
公益的な必要性から機敏に対応し、行政責任を全うしなければならいとき、
行政指導による任意の協力要請が有効となる。
つまり、行政指導を行うのに、法律の根拠は必要ない、と解されている。
行政指導は、権限や法律、一般原則から逸脱してはならない
ただし、行政指導を行うにあたり法律根拠が必要とされないからといって
行政機関にフリーハンドを与えているわけではない。
「任意の協力要請」の形をとれば、法的根拠なく何でもできるとすれば、必ず弊害が生じる。
また、業者と監督官庁、許可申請者と許可官庁、という関係の中では
行政指導という形であっても実質的な強制力が働いてしまう場合も考えられる。
そこで行政手続法32条~34条において以下のような規定がおかれている。
- 当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならない
- 相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない
- 申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず
当該行政指導を継続すること等により
当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない - 「許認可等をする権限」「許認可等に基づく処分をする権限」を有する行政機関が、
当該権限を、行使することができない・する意思がない場合、
当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより
相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない
つまり、行政指導を行うにあたり法律の根拠は不要だが、
法律に抵触する内容であること、実質的に強制に等しい行為をすること、は許されない
ということである。
明確性の確保
また、不明確、恣意的な行政指導を防ぐ目的で、行政指導の方式にも制約がある。
(行政手続法35条)
- 相手方に対して、行政指導の趣旨、内容、責任者を明確に示さなければならない
- 行政指導が口頭でされた場合において、
相手方から趣旨、内容、責任者を記載した書面の交付を求められたときは、
行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない
(ただし、その場で完了する行政指導、すでに書面等が交付されている場合は除く)
さらに複数の者に対する行政指導においては
- あらかじめ、行政指導指針を定め、これを公表しなければならない
(行政手続法36条)
行政指針を定めるにあたっは、意見公募手続を取る必要がある。
救済方法
行政指導が「市民に対する自発的協力要請」であり、
行政手続法に上記のような制約が法定されているとはいえ、
現実には事実上の強制を伴うものであったり、
行政指導に従ったことで不測の損害を被ることもある。
そこで、行政指導に従ったことで損害が生じた場合などでは
多くの判例で、国家賠償法1条による損害賠償請求が認められている。
取消訴訟については、行政指導に「処分性」が認められない、とする判例が多いが、
近年では、「行政指導(勧告)の処分性を認める」判例も出ており、
具体的な事実関係によっては取消訴訟の方途もあることが示されつつあるといえる。
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