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司法制度改革 基礎法学

行政書士・試験ランク B

司法制度改革の背景と内容

これまで司法は、以下のような問題が多く指摘されてきた。

・裁判官が少ない、弁護士が極端に少ない地域がある(弁護士過疎地域)などにより、
 裁判が長期化するなどの問題があり、政治家の仲裁や暴力団の介入に頼る傾向がある。

・裁判官が他の仕事の経験などの社会経験が少ないため、判断に偏りがある。

・行政寄り、政権党寄りの判決が相次ぎ、国民の救済が遅れている。

・犯罪被害者救済制度の整備が欧米に比べ大きく遅れている。

このため1999年に司法制度改革審議会が設置され、
現在、司法制度改革が進められている。

裁判員制度の導入、法科大学院の設置、裁判迅速化法 (2003年)
・犯罪被害者基本法 (2004年)
・司法支援センター(法テラス)設立、被疑者段階での国選弁護人の選任 (2006年)
 


裁判員制度

 裁判員制度のページを参照して下さい。

法曹人口の拡大

日本は法曹人口が欧米に比べ極端に少ない。
このため裁判が長期化し、また、裁判が利用されず、
暴力団の介入や泣き寝入りといった状態が広がったとされている。

そこで法曹人口(裁判官、検察官、弁護士)をこれまでの2.5倍、5万人に増やすことが目指され、
高度な法教育を十分に受けされた上で7割以上が司法試験に合格する法科大学院が設置された。

しかし司法試験合格後の司法修習生の卒業試験に不合格になる者が急増するなど
司法試験合格者の質の低下が問題化し始めている。


法曹一元化

日本の裁判官は、司法試験合格、司法修習後、ずっと裁判官である(職業裁判官制度)ため、
他の仕事などを通じた社会経験が少なく、その判断に偏りがある、と指摘されてきた。

そこで
・裁判官を、一定期間弁護士事務所で働かせる
・裁判官を弁護士から選任する(弁護士任官)
などが始められている。

また、
・検事を、一定期間、公益活動を行う民間機関や民間企業に派遣する
・検事を、一定期間、弁護士の職務を経験させる
などの制度も新設された。


犯罪被害者救済制度

日本は、欧米比べ犯罪被害者の救済制度が大きく遅れており、
犯罪被害者の心理的ケアや財政的援助がほとんどされず、
加害者への感情が悪化し、刑法の厳罰化を国民が支持する背景となってきた。

2000年の法改正により、一定の前進は見られたが、
いまだ米国などに比べ遅れていると指摘されている。

2000年の主な改正は以下の通り。

・犯罪被害者保護法(2005年5月施行)
 …裁判の優先的傍聴権、裁判記録のコピーなど調査権、賠償請求権が確立した。

・改正刑事訴訟法
 …証言の際に付添人を付けられる、被告人に見えないよう衝立などを立てられる、
  テレビモニターなどで別室で証言できる、
  事件での苦しみなどを裁判で話すことができる、
  性犯罪においては告訴の締め切りが廃止される

・改正検察審査会法
 …被害者遺族も、検察審査会に申し立てできる

・被害者参加制度 (2008年実施)
 …犯罪被害にあった人・遺族が、検察官と並んで発言、質問、意見陳述ができる

日本司法支援センター(法テラス)

2004年に公布された総合法律支援法により、
日本司法支援センター(法テラス)が2006年に設立された。

地方事務所が50か所以上設置され、コールセンター(電話受け付け)も設けられている。

主な支援内容は以下。
 ・被害者、支援者に、犯罪被害者支援に精通した弁護士の紹介(犯罪被害者支援法)
 ・成年後見制度や少額訴訟など、法的トラブルの解決に役立つ情報提供
 ・民事法律扶助
 ・国選弁護人関連事業

ただし、弁護士紹介はしても、資力が十分でない場合の対応が、費用・報酬の「立替え」のみ
など、料金・内容などの課題がある。


行政事件訴訟法改正

日本において、行政上の争いは年間20万件以上あると言われているが、
訴訟件数は2000件程度(1%以下)、勝訴率は10%前後である。

また、処分性、原告適格などが限定的に解釈されてきたため、
「裁判を受ける権利」が形骸化しているとの批判が多くあった。

こうしたことから2005年4月改正行政事件訴訟法が施行された。

主な改正内容は以下。
 ・原告適格の拡大
 ・義務付け訴訟、差止め訴訟の法定
 ・管轄裁判所の拡大
 ・出訴期間の延長
 ・執行停止の要件緩和
 ・仮の義務付け、仮の差止め制度の新設


公的弁護制度

従来の「国選弁護人制度」と異なる、「公的弁護制度」が2006年から始まっている。

これは、逮捕されて裁判所が勾留を認めた段階から、
資力の問題で弁護士をつけることができない容疑者に、国費で弁護士をつける制度。

当初は、殺人、傷害致死などの罪種に限定されていたが、
2009年から、窃盗、障害など3年を超える懲役の事件にも対象が広げられている。

裁判外紛争解決手続(ADR)の整備

民間事業者が行うADRの業務に、認証制度を導入した。

法務大臣の認証したADRには時効中断の効力を与えるなど、利便性の向上を図っている。



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